COP28前に世界の温室効果ガス濃度が史上最高に、気候危機への懸念が高まる
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)やメタン、一酸化二窒素の濃度が、2022年に入り21年の観測史上最高値を更新し、気象機関(WMO)が15日に発表した。
この報告が30日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)を前に、WMOは「濃度が上昇し続ける傾向に終わりが見えない」と強い危機感を表明した。
WMOによれば、2022年の世界平均濃度はCO2が417.9ppmで、前年より2.2ppm増加。これは1984年からの38年間で最高値を更新し、濃度は産業革命前の水準の約1.5倍に達した。同様に、メタンが1923ppb(前年比16ppb増加)、一酸化二窒素が335.8ppb(前年比1.4ppb増加)となり、これらも21年の最高値を更新した。メタンは産業革命前の約2.6倍、一酸化二窒素は同1.2倍に増加している。
UNFCCC事務局は14日に、各国の最新の温室効果ガス排出削減目標が達成できても、パリ協定の目標である今世紀末の気温上昇を1.5度に抑えるのは難しいとの報告書をまとめた。COP28では各国の対策進捗や対策強化策が焦点となるが、議論は各国の利害が対立しやすい状況となる可能性が高い。
WMO事務局長は「科学的な警告や数千ページに及ぶ報告書、数十回の気候会議にもかかわらず、私たちは誤った道を進んでいる。現在の温室効果ガス濃度はパリ協定の目標を大きく上回り、異常気象や氷の融解、海面上昇などが急増し、社会経済的、環境的なコストが増大している」と指摘し、「緊急の課題として、化石燃料の消費を削減する必要がある」と訴えた。
公表された報告書によれば、パリ協定に加盟する75カ国の温室効果ガス排出削減目標を詳細に分析。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「1.5度目標」を達成するためには2030年の排出量を19年比で43%減、35年には60%減らす必要があるとしているが、各国の削減計画によるデータは、20年代にピークに達し30年には2%減少するものの、「1.5度目標」には届かないとの指摘もある。
グテレス国連事務総長は報告書に基づき、「世界は気候危機への対処に失敗しつつある」と厳しいコメントを寄せた。 COP28では、これらの課題に取り組むための具体的な方針や国際協力が求められるだろう。
(ソース: Scienceportal)